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東京地方裁判所 平成5年(ワ)19428号 判決

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

理由

【事実及び理由】

第一  請求

一  原告が、原告と被告との間の平成五年五月二〇日付ダイヤルQ2(情報料回収代行サービス)に関する契約(番組番号〇九九〇《以下略》)に基づき提供していた番組(番組名「伝言くん」)と同一の番組について、平成五年一〇月二一日以降も被告による情報料回収代行サービスを受けるべき地位にあることを確認する。

二  原告が、原告と被告との間の平成五年七月二九日付ダイヤルQ2(情報料回収代行サービス)に関する契約(番組番号〇九九〇《以下略》)に基づき提供していた番組(番組名「スタジオキャンキャン」)と同一の番組について、平成六年一月一三日以降も被告による情報料回収代行サービスを受けるべき地位にあることを確認する。

第二  事案の概要

原告は、被告との間でダイヤルQ2(情報料回収代行サービス)に関する契約二本を締結のうえ、被告の電話回線を利用していわゆる「伝言型番組」の提供を行っていたものであるが、被告から、契約期間満了後は同種の内容での再契約ないし契約更改には応じられない旨を通告されたのに対し、右通告の効力を争い、契約期間満了後も右契約上のサービスを受け得る地位にあることの確認を求めて提訴した。

一  争いのない事実等(証拠を掲げた部分以外は当事者間に争いがない。)

1 被告は、国内電気通信事業及び同事業に附帯する業務を営む株式会社であるが、平成元年七月から、情報料回収代行サービス業務、いわゆるダイヤルQ2(以下「ダイヤルQ2」という。)を開始し、現在に至っている。

2 ダイヤルQ2における情報料回収代行の仕組みは、おおむね以下のとおりである。

(一) 電話の利用者は、通常、〇九九〇に続く六桁の番号として指定される番組番号をダイヤルして、情報提供者(以下「IP」という。)から有料の情報提供を受ける。

(二) 被告は、電話加入者である利用者から、回線使用料のほかに、IPに代わって右情報の対価(以下「情報料」という。)を回収する。

(三) 被告は、回収した情報料から、回収代行に伴う一定の手数料を差し引いた残額をIPに支払う。

3 原告は、平成三年三月七日、被告との間で、番組番号〇九九〇《以下略》で提供する番組(番組名「テレフォンツインルーム」)について、契約期間を五か月と定めて、ダイヤルQ2に関する契約(以下、単に「ダイヤルQ2契約」という。)を締結した。

その後、右番組番号にかかる契約は、ほぼ五か月ごとに再契約の措置が採られ、平成五年五月二〇日、原告と被告は、右番組番号にかかる最終のダイヤルQ2契約を締結、契約期間は、平成五年五月二一日から同年一〇月二〇日までの五か月間と定められた(以下「本件契約1」という。)。

なお、原告は、契約期間を平成四年二月二一日から同年七月二〇日までとする契約以降、番組内容を、いわゆるツーショット番組から伝言型番組に変更、それに伴い、番組名を「伝言くん」に変更している。

4 原告は、平成三年三月七日、被告との間で、番組番号〇九九〇《以下略》で提供する番組(番組名「テレフォンツインルーム」)について、契約期間を五か月と定めて、ダイヤルQ2契約を締結した。

その後、右番組番号にかかる契約は、ほぼ五か月ごとに再契約の措置が採られ、平成五年七月二九日、原告と被告は、右番組番号にかかる最終のダイヤルQ2契約を締結、同契約における契約期間は、平成五年八月一三日から平成六年一月一二日までの五か月間と定められた(以下「本件契約2」という。)。

なお、原告は、契約期間を平成四年五月一三日から同年一〇月一二日までとする契約以降、番組内容を、いわゆるツーショット番組から伝言型番組に変更、それに伴い、番組番号が〇九九〇《以下略》に、番組名が「スタジオキャンキャン」に、それぞれ変更されている。

5 被告は、平成五年七月一五日ころ、原告に対し、「ダイヤルQ2のジャンル別番組提供等実施のお知らせ(案)」と題する書面を送付し、「いわゆる伝言型番組など利用者相互間の通信を媒介とする番組において、不特定多数の男女間の通信の媒介を目的とする番組については、いわゆるツーショット番組と同様に、青少年に悪影響を与える恐れが生じてきたことから、今後、被告は、この種の番組に対するダイヤルQ2の提供を行わない」旨の見解を示して、原告が当時提供していた前記二本の伝言型番組についても、同年一〇月一日以降は、同種の内容での契約更改(再契約)には応じられない旨を通告した。

二  争点

1 被告によるダイヤルQ2サービスの提供は、電気通信事業法三四条の定める「電気通信役務」の提供に該当する結果、同条により、被告は、正当に理由がないかぎり、本件各契約について、契約更新ないし再契約に応ずべき義務があるものと言えるか。

2 本件各契約は、継続的契約として、更新を原則とするものと言えるか。

3 被告が、本件各契約について、契約更新ないし再契約を拒絶したこと(以下「本件番組打ち切り」という。)は、被告自身の提供する「伝言ダイヤル」等との自由かつ公正な競争を阻害することを目的としたものとして、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独禁法」という。)に違反した違法な措置であり、民事上も、権利の濫用に該たると言えるか。

4 被告による本件番組打ち切りは、信義則(禁反言)に違反するか。

第三  争点に対する判断

一  争点1(電気通信事業法違反の有無)について

1 原告は、本件各契約に基づくダイヤルQ2サービスの提供は、電気通信事業法(以下「法」という。)三四条所定の「電気通信役務の提供」に該当するものであるから、同条により、被告は、正当な理由のないかぎり、本件各契約について、更新ないし再契約を拒絶することはできない旨を主張するので、以下では、まず、ダイヤルQ2が「電気通信役務の提供」を含むものであるか否かについて検討する。

2 思うに、法三四条が、被告を含む第一種電気通信事業者について、正当な理由がないかぎり、電気通信役務の提供を拒むことができない旨を規定しているのは、現代社会において、電気通信、中でも電話回線網に代表される電気通信設備が、国民生活上、極めて重要かつ普遍的な役割を果たしていることに鑑み、電気通信回線設備を設置して電気通信役務を提供する事業を営む第一種電気通信事業者は、右設備の利用を希望する全ての利用希望者に対して、等しく電気通信役務を提供すべき旨を要求した趣旨であると解することができる(法一条、二条二号、同条三号、六条二項、七条、三四条)。

そうであるとすると、法三四条にいう「電気通信役務」とは、電話回線を利用して通話をさせる役務のように、すべての利用希望者に対し、当該役務が提供されなければならないような普遍性・重要性を有する役務を指すと解するのが相当であるが、ダイヤルQ2において、IPが被告から受け得る役務(情報料回収代行サービス)は、電話回線の利用を前提とするとはいえ、それに付随する別個のサービス(情報提供の対価である情報料を計算して、利用者から回収する業務)であるばかりか、その利用を希望する者(IPとなることを希望する者)の全てに対し、公平に保障されねばならないほどの普遍性・重要性を有しているものとも考えられないから、被告によるダイヤルQ2サービスの提供は「電気通信役務」に該当しないものと解するのが相当である。

3 これに対し、原告は、被告は、被告との間でダイヤルQ2契約を締結したIPに対し、右契約に基づく情報料回収代行サービスの一環として、ダイヤルQ2の利用者に対する音声での利用料通知や、〇九九〇で始まる番組番号の利用など、電話回線を介した形でのサービスを提供していたものであり、右のとおり、ダイヤルQ2によって提供されるサービスの中に、電話回線を利用しなければ実現できないものが含まれる以上、ダイヤルQ2も、電気通信回線設備を利用した役務の提供(法六条二項)として、法三四条の規定する「電気通信役務」に該たると解すべきであると主張する。

しかし、子細に考察してみると、原告が「電話回線を利用しなければ実現できないサービス」として主張するもののうち、音声での利用料通知は、ダイヤルQ2契約の効果として、被告からIPに提供されるサービスというよりは、むしろ、被告によって、ダイヤルQ2を利用するユーザーの側に提供されるサービスと把握するのが相当であるし、〇九九〇で始まる番組番号の利用については、ダイヤルQ2契約が終了した後においても、別の電話番号にはなるものの、IP側に設置された電話を通常の着信専用電話として利用すること自体は可能であるから、結局、ダイヤルQ2によって提供されるサービスが法三四条にいう「電気通信役務」に該当することの根拠とはなり得ない。

換言すれば、IPとユーザーとを結ぶ電話回線は、ダイヤルQ2契約に基づいて、情報料を計算し徴収する必要から、一定の設備(音声による利用料告知や〇九九〇で始まる番組番号の利用は右設備に関わるものであると理解される。)を通過するに過ぎず、右設備の有無にかかわらず、IPとユーザーとは一般の電話回線によって通信を交わすことができるものと解されるのであって、そうであるとすると、ダイヤルQ2サービスのための右一定の設備を利用させることが、「電気通信役務」の提供に該たるものでないことは明白と言うべきである。

4 また、原告は、ダイヤルQ2における役務の提供が「電気通信役務」に該当する旨を判示した例として、大阪高等裁判所の判決例(大阪高判平成五年(ネ)第九〇七号)を引用するが、判決文自体から明らかなとおり、同判決は、ダイヤルQ2利用によって発生した情報料及び通話料の負担をめぐる被告と電話加入者との間における紛争について、もっぱら、被告と利用者との間の関係に着目して、被告がIPと利用者との間に入って「情報」を媒介する行為(有料情報サービス)は、利用者の立場から判断したとき、「電気通信役務」に該当する旨を判示したものに過ぎず、本件で問題となっている被告とIPとの間の契約関係(ダイヤルQ2契約に基づき、被告がIPに対し提供する役務の性質)についてまで判断しているものではなく、本件とは事案を異にするものであるから、前記の判断を左右するものではない。

5 以上によれば、ダイヤルQ2契約によってIPに提供されるサービスは、法三四条の定める「電気通信役務」に該当するものとは認められないから、その余の点について検討するまでもなく、本争点に関する原告の主張は採用することができない。

6 なお、原告は、ダイヤルQ2サービスが電気通信役務に該当しないものとすると、被告の情報料回収代行業務が弁護士法七二条のいわゆる非弁活動に該当する旨を主張するが、同条は、事件性のない業務の中で行われる単純な法律事務の全てを禁止するものではなく、本来の業務に付随して行われる場合は除外されているものと解するのが相当であり、本件で問題とされている情報料回収代行業務は、有料情報サービスを開始したことによって生じる付随業務と見るべきであるから、右主張は理由がない。

二  争点2(本件各契約の性質)について

1 本争点に関し、原告は、

(一) ダイヤルQ2用の回線は受信専用であって他に流用できないうえ、IPが事業として情報提供を行うためには相応の資本の投下が必要であるところ、契約期間満了後に契約関係を継続するか否かの判断を被告が自由に定めることができるとすると、IP側は経営活動の見通しを立てることができなくなる。

(二) 原告と被告との間のダイヤルQ2契約においても、当初は、更新条項が置かれていた。

(三) 以上によれば、本件各契約は、期間満了後も契約が更新されることを当然の前提とした契約と解すべきであり、特段の事情のないかぎり、期間満了後も、被告は、本件各契約につき、更新ないし再契約に応じるべき義務があるものと解すべきである。

旨を主張する。

2 そこで、原告の右主張について検討するに、《証拠略》によれば、

(一) 平成三年三月七日に締結された当初の契約においては、いずれも、第一七条として更新条項が置かれ、「この契約は、期間満了の三〇日前までに原告、被告いずれか一方から書面による更新拒絶の意思表示がないときは、さらに一年間その効力を有するものとし、以後も同様とする。」旨が規定されていた(以下「本件更新条項」という。)。

(二) 被告は、原告に対し、右各契約につき、いずれも、平成三年七月八日到達の内容証明郵便により、期間満了日(同年八月一一日)以降の契約更新は行わない旨を通知した。

(三) 平成三年八月七日、原告と被告は、甲第一号証及び第七号証の各契約書によって定められた契約につき、いずれも再契約を締結したが、以後は、期間満了後の契約関係継続については、改めて再契約によるものとすることで合意、本件更新条項は削除され、本件各契約まで本件更新条項が再び規定されることはなかった。

以上の事実を認めることができる。

右事実によれば、本件各契約が期間満了後に更新することを原則とした契約であると認めることはできず、かえって、本件各契約は、期間満了時の更新を排除しているものと認めることができるから、その余の点につき判断するまでもなく、本件各契約が更新を原則とするものであることを前提とする原告の前記主張は採用することができない。

3 なお、原告の真意は、更新ないし再契約という法形式の差異を問題とするものではなく、ダイヤルQ2契約がいわゆる継続的契約に属する契約であることを強調することにより、本件各契約の期間満了後において、被告に契約継続の義務を認めるべきであるとの結論を導くことにあるものとも解されるので、その点について付言する。

ダイヤルQ2契約が、講学上いわゆる継続的契約関係に属するものであることは一応認められるにしても、右契約によって定められた存続期間が満了した後に、契約関係を継続するか否かは、原則として、当事者の自由に委ねられた問題であると解するのが相当である(契約自由の原則)。

したがって、借地・借家関係に見られるように、立法により更新強制の措置が講じられている場合であれば別論、そのような措置が存しない以上(なお、電気通信事業法三四条違反の問題が生じないことについては前記一のとおり。)、本件各契約について、被告に、契約期間満了後の再契約ないし契約更新を行うべき法的義務を認めることは困難である。

また、前示のとおり、本件更新条項においても、期間満了の一か月前までに文書による更新拒絶の意思表示を行えば、契約更新を止めることができるとされていたものであり、その限りで、契約関係を継続するか否かの選択権は被告に留保されていたものと認めるのが相当であるから、右に述べた結論は、本件更新条項の有無によって影響されるものではない。

4 更に、契約の実体に即して検討するに、契約当事者の一方が長期間の契約を予定した設備を設置し、短期間では右設備に投下した資本の回収が困難であるような場合、相手方当事者において、契約書の契約期間条項あるいは契約書に更新条項の付されていないことを理由に、一方的に更新ないし再契約を拒絶することが、信義則上許されないとされる場合があり得るが、本件において被告が再契約を拒む前記認定の理由と比較衡量したとき、原告主張の契約の実体に即して検討しても、被告の再契約拒否が信義則違反に該たるものと解することは困難である。

5 よって、本争点に関する原告の主張はすべて理由がない。

三  争点3(独禁法違反の有無)について

1 本争点に関し、原告は、

(一) 被告は、電気通信事業者として独占的地位にあり、電話回線を利用した番組の提供は、被告の電話回線なしには不可能なばかりでなく、番組提供による情報料の回収も被告の協力なしには事実上不可能である。

(二) 被告が、ダイヤルQ2における伝言型番組を規制し、本件番組打ち切りを行った目的は、右番組に流れている利用者を、被告自身の運営する「伝言ダイヤル」ないし「メッセージイン」のユーザーとすることにある。

(三) 原告は、被告の提供するダイヤルQ2以外には、情報料の回収について有用かつ実効性のある代替手段を持たないから、本件番組打ち切りによって、電話回線による情報提供事業からの撤退を余儀なくされる。

(四) 以上によれば、被告による本件番組打ち切りは、「市場における有力な事業者が、競争者を市場から排除する等の独禁法上不当な目的を達成するための手段として、取引の拒絶等を行い、これによって取引を拒絶される事業者の事業活動が困難となる恐れがある場合」に該当し、独禁法二条九項所定の不公正な取引方法として許されないものである。

(五) 独禁法違反行為の私法上の効果については争いがあるが、原告と被告との間の力関係を考慮すれば、独禁法上許されないような取引の拒絶は、私法上も権利の濫用として許されないものと言うべく、結局、被告には、本件各契約について、契約更新ないし再契約を行うべき私法上の義務があるものと解すべきである。

旨を主張する。

2 以下、原告の右主張の当否について検討する。

(一) 本件各契約に基づき、原告が「伝言ダイヤル」ないし「スタジオキャンキャン」の番組名で提供してきた伝言型番組は、いずれも、その利用を呼びかける広告の内容自体から、不特定多数の男女による利用を目的としていることは明らかである。

特に、原告提供の番組においては、女性については番号〇一二〇で始まるフリーダイヤルを利用することによって、通話料は受信する原告の側で負担するものとされていたことに特徴があり、このことによって、原告は不特定多数の女性による「伝言」を多数獲得することができ、その結果、不特定多数の男性ユーザーが、右女性側の「伝言」を聞くために番号〇九九〇で始まる本件ダイヤルQ2番組を利用することが期待されるという仕組みになっていたものと見ることができる。

(二) これに対し、被告が提供する「伝言ダイヤル」ないし「メッセージイン」は、いずれも、特定の暗証番号(伝言ダイヤルについては一〇桁ないし一四桁、メッセージインについては四ないし八桁)を使用しないかぎり、メッセージの交換が不可能なシステムが採られていることからすれば、右暗証番号を共有する特定人間における利用を目的としているものと認められ、番組提供の目的において、原告提供にかかる各番組とは顕著な差異が存するところである。

(三) この点、原告は、その利用の実態において、「伝言ダイヤル」が不特定多数によるメッセージ交換に利用されていると主張し、右主張に沿う証拠を援用するが、仮に、原告の右主張が真実であるとしても、利用形態の一部が競合するというに過ぎず、事業全体としては、原告提供にかかる各番組と被告提供の「伝言ダイヤル」ないし「メッセージイン」が競争関係にあるとまでは解することができないから、独禁法違反をいう原告の主張は、そもそも前提となる競争関係を欠くという点において、失当であると言わざるを得ない。

3 以上のとおり、本件全証拠をもってしても、本件番組打ち切りが独禁法に違反するものとは認めることができないから、その余の点について判断するまでもなく、本争点にかかる原告の主張は採用できない。

四  争点4(信義則違反の有無)について

原告は、被告は、ダイヤルQ2のIPを募集するにあたり、当初、提供する番組の内容についてはタッチすることはできないとの見解を示していたものであるから、伝言型番組の弊害を理由に、本件番組打ち切りを行うことは、原告の当初の期待を裏切るものとして、信義則(禁反言)に違反するものである旨を主張する。

しかしながら、不特定多数の男女間の「伝言」媒介を目的とする伝言型番組の横行など、ダイヤルQ2においては、倫理的に見て非難されるべき番組が提供される例が多いことから、ダイヤルQ2事業を営む被告に対する社会的非難が高まっていることは公知の事実であり、右社会的非難を前に、被告が、同種の番組に対する規制を強め、契約の継続を認めない措置を採ったこと自体は、被告の公益企業としての責任を考えれば、むしろ当然の措置であると評価することができる。

そして、原告提供の各番組が、不特定多数の男女間の「伝言」媒介を目的とする伝言型番組の一つとして、右社会的非難を作り出す一つの要因となってきたことは言うまでもなく、かかる立場にある原告が、被告の規制措置に対し、信義則違反を主張することは、到底、法の許容するところではないと言わなければならない。

そうだとすると、仮に、被告が、IP募集に際し、原告主張のとおりの見解を示した事実が認められたとしても、本件番組打ち切りを信義則に違反するものと言うことはできないから、その余の点について判断するまでもなく、本争点に関する原告主張は主張自体失当と言うべきである。

五  結論

以上の事実によれば、原告の請求はいずれも理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 沢田三知夫 裁判官 村田鋭治 裁判官 早田尚貴)

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